ラストチャンス
LIMO 通信 最終号より

「公益財団法人山の暮らし再生機構」(通称:LIMO)は、
昨年度末の理事会、評議員会の承認を経て、令和3年3月31日をもって解散することを宣言し、
この4月から正式な解散手続きに入っている。
LIMOは、中越地震被災地の復興支援を目的として設立され、
今日まで激甚被害となった新潟県中越地域の「中山間地域の再生」のために復興支援活動を展開してきた。
令和3年3月31日と言えば、時を同じくして、過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)が期限切れを迎える日にもあたる。
この「過疎法」の期限切れを前にして、総務省の有識者懇談会が中間報告書を公表した。
今、一枚の写真を横において、中間報告書を読んでいるのだが、
この写真は、長島忠美(旧山古志村長)氏が、
生前、最後の出席となった平成29年の成人式の記念写真である。
すでに旧山古志村では、成人式を迎える若者が一けた台になっていたのだが、
毎年、村外に出て行った若者たちも里帰りする8月14日の猛暑のなか開催される。
長岡市のそれとは別に単独で開催され、
当時衆議院議員だった長島氏は、今も国会議員としてではなく、旧山古志村長として式典に出席していた。
式典の後、長島村長は、「何とか、彼らに武器を残してやりたい。
現行の過疎法を新法として成立させ、過疎債をソフト事業に活用して地域活性化を図れるようにしてやりたい。
彼らが自分たちで知恵をとことん絞って、いろいろな人たちからの知恵も借りて、
文字通り自立した山古志を自分たちで創り上げられるようにしてやりたい」と呟いた。
「過疎法は議員立法なのですから、与党議員の皆さん次第で新法として制定できるのではないですか」と言うと、
「都市部に住む大多数の皆さんは、けっして中山間地の存在価値を理解してくれている訳ではない。
むしろ無関心でしかないと言った方がいいのかも知れない」と嘆き、
「地方各地に根差している文化、そこにある多様な生態系、川の上流域で守っている都市への被害低減、
中山間地に住む住民だけでなく、都市住民にも過疎地域の価値そのものを再認識してもらう必要がある。
中越地震は、そのことを教えているのだが」と続けた。
あれから3年。
今、コロナ禍のなかにあって、山古志に住む若者は、密かにこの地を売り出そうと動き始めた。
少子・高齢化により、低密度な居住環境と成らざるを得なかった現実を逆手にとって、テレワーク化が進み、
サテライトオフィスが地方展開してくるだろう可能性を直視して、中越地震からの復興プロセスで培った底力を、もう一度結集しようとしている。
今、日本の国土の70パーセントを占める「中山間地域」にも、確実にチャンスが訪れている。
いや、ラストチャンスなのかも知れない。