栃尾の雁木をみんなであいぼ!
ゴールデンウィークの初日、5月3日(水・祝)に栃尾地域で「雁木あいぼ」が開催されます。
このイベントを主催する「とちお歩く旅のまちづくり委員会」で代表を務める広野光春さんを訪ねました。
広野さんのお宅は栃尾地域、谷内通り商店街内の「広野茶屋」。
お邪魔するといつもお茶を出してくれます。広野さんのところで飲むお茶はほんとにうまい!
生まれた時から当たり前に存在していた「雁木」。それを活かした「雁木あいぼ」というイベント。
「雁木」?「あいぼ」?聞きなれない言葉だらけのこのイベント。
なぜこのイベントを始めたのか?どんな内容なのか?などなど、広野さんに詳しくお伺いしました。
今井善章(以下、今井)
「広野さん、お疲れ様です。今日は雁木あいぼのこと、聞きにきました。まず何を聞こうかな…。では、雁木について教えてください。そもそも、なんで作られたのかとか。」
広野光春さん(以下、広野)
「一言で言うと、『人々の思いやりを形にしたもの』だな。」
今井(…おぉ!いきなりいい言葉が出てきたな)
「それは、どういうことですか?」
広野
「栃尾地域は豪雪地帯。昔は屋根に積もった雪は道路に出すしかなくて、1階が埋まってしまうほどだった。最近は重機で除雪されるし、道路脇に流雪溝が出来て排雪出来るようになったからそんなことはなくなったけど、昔はみんな2階から出入りしていたし、通行するのも大変だった。
そこで、通り沿いに家から軒先を伸ばして、生活道を確保するために作られたのが雁木。実は雁木の下は公道ではなく、自分の土地を提供して、実費で建てられたもの。だからこそ、人々の思いやりを形にしたものだと思うんだ。」
今井
「雁木は、自分の土地を提供して作られたものだったんですね。
雁木って聞きなれない言葉だけど、なんで雁木と呼ばれてるんですか?」
広野
「諸説あるけど、この辺で一番有名な由来は、雁木は家と一緒に建てられるから、高さや作りもまちまちになる。その姿が雁(ガン)が渡りをするときにV字に編隊飛行しながらもよく見ると等間隔じゃなかったり、隊列から外れている様子、そして最近は鉄骨で作られたものも増えたけど、昔は木造だったことから、雁木と名付けられたんだ。」
今井
「では、なんでこのイベントをやろうと思ったんですか?」
広野
「5月1日から5日まで、常安寺で『てまりまつり』が行なわれていて、そこに来る人が栃尾地域外の人が多かった。その人たちに栃尾を巡ってほしい。車では過ぎ去ってしまうのも、歩くことでいろんなことを感じたり、気づいてほしいと思って始めたんだ。「あいぼ」は、こっちの方言で「歩こう」という意味。『雁木を歩こう』っていうイベントなんだ。」
今井
「そういうキッカケだったんですね。広野さん、てまりまつりのことも教えてもらえますか?」
広野
「まず、てまりは昔から養蚕や機織が盛んだった越後の山里では、クズ糸とか機織の残糸を使って母親や祖母が子供や孫の玩具として作ってあげたものなんだ。てまりには、ついて遊ぶ『遊び玉』と子どもの健やかな成長を祈って飾る『飾り玉』がある。『遊び玉』は、ついて遊びやすいように工夫されているし、『飾り玉』は縁起物として七福にあやかって7種類の縁起のいい木の実を入れたり、表面には縁起がいい模様を刺しているんだ。てまりは、特に女の子に贈られることが多い。嫁いでいった娘に、生涯の幸福を祈る親心が込められているんだ。
どこでも見られたこの伝統も、今は栃尾でしか残ってない。栃尾では伝統製法を継承するために、昭和58年に有志で『栃尾てまりの会』が設立された。栃尾独自の柄は『栃尾てまり』と言われているし、継承された柄だけでなく新たに創作された模様もある。それらのてまりの展示販売や製作体験を常安寺の境内を使ってやっているんだ。」
今井
「あらためて、てまりは貴重な資源ですね。私もてまりづくりをしたことがあるんですけど、没頭できるし、一針一針完成に近づいていく感じが楽しかったです。
『雁木あいぼ』はどういった内容で行われているんですか?」
広野
「機織り体験や昔語り、木工体験、栃尾の土を使ったろくろ体験、その他様々な催しを雁木通り沿いで行なっている。あとは、『ツバメの会』が出てくれているものありがたい。実はツバメは人の生活と密接に関わってるんだ。農家にとっては虫を食べてくれるし、軒下に巣を作るのも理由があるんだ。」
今井
「雁木通りをよく見ていると、ツバメの巣を作りやすいように台を設置しているお宅もありますね。
『ツバメの会』はどんな活動している団体なんですか?」
広野
「雁木にあるツバメの巣の数を調査したり、南小学校の総合学習で子供たちと雁木にあるツバメの巣の観察をしたり、栃尾地域の小学生に向けてツバメについてのアンケートなんかもしている。雁木あいぼ当日は、長岡市の野鳥愛護の会と一緒になって、野鳥の写真の展示や工作、ツバメの生態を知ってもらう為にクイズなんかもしているよ。」
今井
「栃尾もまだまだ知らないことが多いですね。雁木あいぼの会場は、地域内の雁木通りということで広いですよね。来場者にはくまなく巡ってもらって、いろんな発見をしてほしいですね。」
広野
「2年前までスタンプラリーをしていたんだけど、去年から『謎解き町めぐり』と銘打って、雁木通りの各所がヒントになるような内容で、10個の謎解き問題を用意してるんだ。問題はまだ教えられないけど、当日まで楽しみにしてほしいな。」
今井
「子供たちもゲーム感覚で楽しめていいですね!
雁木あいぼは何年目になりますか?」
広野
「雁木あいぼも今年で14年目。自分たちも歳を取った。でも、とちラボ※とか新しくこのイベントに出店してくれる人もいるからそれはありがたいな。」
※とちラボも昨年の「雁木あいぼ」に合わせて、ヒロチュウで「ものづくり体験ワークショップ」を開催。栃尾地域でデザインの教室を行う「キッズデザインスクール」と共に、栃尾の木で作るアクセサリーづくりやアート書道、不思議な万華鏡づくりをやりました。
今年も、シルクスクリーンプリント体験やアート書道、折り紙ランプづくりを行います!

今井
「そういってもらえるとありがたいですね。
広野さんが思う、今後の展望というか理想みたいなのはありますか?」
広野
「地域にあるものが磨かれて、小さいことから連続性を生んでいきたい。雁木通りの商店の人が自分のところで使っている道具、例えばお菓子屋の木型とか、個人でも趣味で集めたものを軒先で展示してくれる。それを見に来た人と自然と会話が生まれる。扱っている人にとっては当たり前に使っているものだけど、来た人にとっては非日常。そういう空間を作りたい。今日、こんなところでこんな面白い人に会ってきた、と印象に残る。また行ってみたいと思ってもらえるような。」
今井
「古い道具とかテンションあがりますね!あるものが磨かれていく。大事なことですよね。栃尾には雁木も含め、資源がたくさんあると思いますし。
では、最後にこのブログを見てくれた人に一言お願いします。」
広野
「あなたも栃尾の雁木をみんなであいぼ!だな」
今井
「シンプル!広野さん、今日はありがとうございました!」
栃尾に残る雁木の街並みはいまだに多く、総延長およそ4.3kmです。
これは、新潟県上越市、新潟県旧長岡市に次いで日本で3番目に長く、豪雪地帯である栃尾の名物であるとともに、冬に限らず、雨がしのげるなど住民の生活にも密接に関わっています。
近年、過疎化に伴う商店街の衰退も相まって、雁木の維持や保存が難しくなってきている地域が増えています。栃尾では、まちづくりの一環として、雁木が醸し出すなつかしい景観を守るため、平成9年度から県内の学生と協力し、雁木の新設や保護に努めています。
表町の雁木通りには「雁木の駅」があり、それらの取り組みの紹介を見ることも出来るので、ぜひ立ち寄っていただきたいです。
その他にも、栃尾観光協会のホームページで雁木について詳しい情報を見ることが出来ます。
栃尾観光協会ホームページ
http://tochiokankou.jp/index.html
第14回 とちお謎解き町めぐり雁木あいぼ
日 時:平成29年5月3日(水・祝)
10:00~16:00
会 場:長岡市栃尾地域内の雁木通り
会場本部 :秋葉門前商工プラザとちパル
駐 車 場:道の駅駐車場(シャトルバスで会場間を巡回します)、
長岡市営中央公園駐車場、長岡市栃尾大野町駐車場
問い合わせ:栃尾観光協会
(0258-51-1195)
詳細は、栃尾観光協会ホームページをご覧ください。
http://tochiokankou.jp/matsuri/aibo.html
まちめぐりのお供にはこちらをお使いください。
「まちめぐりマップ」
http://tochiokankou.jp/map/index.html
イベント当日は、本部を含めた「雁木あいぼ」ののぼりが立っている場所に、まちめぐりマップが設置されます。謎解き問題も掲載されていますよ。
マップ片手に「雁木をあいぼ!!」

今井善章 支援員