やまごよみ初夏編~かぁちゃんはやまに笹採りに
山菜採りがひと段落する6月の半ばから7月にかけて、再びかぁちゃんたちの山通いが始まります。
山菜ではなく、笹の葉を採取するためです。
イッセイのシャツ着こなせる若者がふるさと自慢に言う笹だんご
『チョコレート革命 俵 万智』
新潟みやげといえば笹だんごというぐらい、笹だんごは新潟を代表する食べ物です。
その笹だんごをはじめ、三角ちまき、笹もちなどの新潟の食には笹が欠かせません。
今はお土産屋さんをはじめ道の駅、和菓子屋さんなどで販売され、いつでも手軽に食べることができますが、もともとは各家庭で手作りされてきた郷土食です。昭和30年代半ばまでは、端午の節句や田植えのあとの早苗振(さなぶり)などのハレの日に振る舞われたり、くず米を利用して日常的に食されたりしてきました。ちなみに、新潟では、端午の節句を旧暦で祝うのです。
その歴史は古く諸説ありますが、天文3(1554)年、上杉謙信が出陣の際に、柿崎城主に仕える菓子司が中国のちまきをもとに創案したのではないかと言われています。当時は、だんごを笹で包んだだけのものだったようです。笹の持つ殺菌作用が保存食、戦の際の携帯食に適し、戦国時代には兵糧とされたと伝えられています。
現在のように餡が入るのは、砂糖が一般的に入手できるようになった明治以降です。
笹だんご専門のだんご屋が登場したのは、昭和30年頃です。そして、昭和39年に開催された新潟国体(第19回国民体育大会)で「新潟土産・笹だんご」を売り出したのがきっかけになり、全国に知られるようになりました。手軽に買えるようになった半面、家庭で作る習慣は次第に少なくなってきました。
しかし、山のかぁちゃんたちは笹だんご、三角ちまき、笹もちなどを今でも手作りしています。
主に、端午の節句の頃に、笹だんごや三角ちまき、お正月や冬の時期に笹もちを作って食べることが多いようです。一度に50個、60個、多い時には100個以上を作り、家族で食べるだけではなく親戚や友人などにも配ります。

また、地域による特色があり、太田地区や村松地域ではヨモギの代わりに山菜の一種であるオヤマボクチ(ヤマゴボウ)を入れた白い笹だんごが、栃尾地域では昔ながらの灰汁を使った黄金ちまきが作られるなどしています。

笹だんごを作るには3枚の葉を、三角ちまきや笹もちを作るには2枚の葉を使うため、大量の笹の葉が必要になります。
笹だんごを作るには、この時期の笹採りは欠かせないのです。
笹は一年中青々としているのに、なんでこの時期に?と思われるかもしれませんが、料理に使う笹はその年に出る若葉に限られているからです。この地方では、この若葉のことを「新芽」と呼びます
何と言っても、新芽は香りが全然違うそうです。
そして、前の年の葉はこの時期には固くなっているため、だんごやちまき、もちを包むのに適さないそうです。また、この時期を逃すと葉に虫がつくこともあるといいます。
採った笹の葉は、大きさごとに束ねて冷凍保存します。昔は、天日に干してから保存していました。

山のかぁちゃんたちは、これから一年分の笹を確保するために、この時期に笹の葉を採りに山へ通うのです。

佐々木ゆみ子 支援員