やまごよみ晩秋編~干す-里山の冬支度~
「雪で越後三山が3回白くなったら、次は里に下りてくる」
昔から川口地域で聞かれる言葉です。
里山では、昔から八海山、中ノ岳、越後駒ヶ岳という2,000m級の高い山と自然の変化が暦の一つ一つ、暮らしの目安となっています。
高い山に雪が降れば、冬の訪れももうすぐ。そうなる前に、人々は最後の冬支度で大忙し。
「干す」という行為も、そのひとつです。
この時期、少しでも日差しがあればいたるところで見られる風景。
玄関前や車庫、庭先にさまざまなものが干されています。
これから冬を迎えるための準備です。
ひと晩で1mもの雪が降ることもめずらしくない雪国です。すっぽりと雪に家がおおわれることもしばしばです。
除雪体制が整った今では、雪で孤立するということはほとんどありません。しかし、ひと昔前までは何があってもひと冬過ごせるようにと食料を蓄えていました。それが雪国の保存食。厳しい冬を乗り越えるために受け継がれてきた雪国の食文化です。
真冬の買い物に不自由しなくなった今でも、先人たちから受け継いだ知恵と工夫で保存食づくりをしています。手間も時間もかかります。買ってきたほうが簡単だと思いますが、保存食をつくり続けています。
たとえば大根。越冬用の大根は、1、2回雪にあてたほうが甘くなるといわれています。だから、初雪を過ぎたころに収穫できるように逆算して、8月末頃に種を蒔きます。そして11月上旬に少し細めの大根をたくあん用に収穫。そして、多くの場合、葉をつけたまま干します。
越冬用の大根は、ぎりぎりまで畑で太らせます。初雪をあて、天候を見ながら掘る時期を決めます。根雪になってしまうと、雪の中から掘り出さなければならないので大変な作業になってしまうからです。
たくあんと違い、越冬用の大根は葉を落とします。葉がついたままだと葉から水分が抜けたり、大根の栄養が葉にいってしまうからです。
また、まるまるとしたものはそのまま越冬用に保存、形のわるいものは「つい」たり、4つ割り、6つ割りにしたり、薄くスライスして干します。「つい」たものは切干大根になり煮物に、割ったものは干し大根にして煮物、漬物に、スライスしたものははりはり漬けや当座漬けなどの漬物になり、冬の間中、食卓にのぼります。
そのほかにも、川口地域で昔から作られている落花生の「ぼこまめ」。一般的な落花生より小粒ですが味が濃厚でしっかりしています。
干し柿。川口地域の柿は、ほとんどが渋柿です。渋を抜くために2週間ほど干します。また、へたの部分を焼酎につけて5日~1週間ほど密封して渋を抜くさわし柿もあります。
サツマイモやサトイモも干します。表面の水分を飛ばすことで腐りにくくなるからです。
ヤツガシラの茎の部分はずいき。こちらは、からからに干して保存。酢の物や煮物にします。
酢に反応して鮮やかな赤に発色するため、おめでたいおせち料理の一品とする家庭も多いようです。
お日さまの力を借り、寒風の力を借り、また雪の力を借りて収穫したものを無駄なく、保存、貯蔵する。
「干す」は、旬の味とはまた違った美味しさを味わうための先人たちの工夫です。
おじいちゃんも一緒にひなたぼっこ。

佐々木ゆみ子 支援員