おぐにっ子からあなたに伝えたいこと~⑧
「キミたちの選んだ道を応援しています。そしてキミたちの先輩が、小国で選んだ道も知ってほしい。」
自分とは違う世代の彼・彼女が、こんな風に小国を考えているのだと知った時、新成人だけでなく、たくさんの人達にこのメッセージを知ってもらいたいな、と思いました。「おぐにっ子からあなたへ」、お伝えします。
第8回は、安澤公司(こうじ)さん(32歳)です。
小国で唯一のスーパー『もったいない村』。
車で15分も走れば、近隣の町には大きなスーパーがあり、『もったいない村』を利用する人は限られています。
でも、「小国の中にスーパーは必要。絶やすことはしたくないし、続けていきますよ」と店長の公司さんは言います。
公司さんが『もったいない村』に就職したのは、今から8年前の2011年のこと。大学を卒業した後、ビデオ屋さんでアルバイトをしながら職探しをしていた時に、ハローワークで『もったいない村』の募集を知り、勤め始めました。
当時、『もったいない村』はオープンしたばかり。農産物直売所とセレモニーホールが併設された施設でした。
小国では、多くの人が自家用の野菜を作っています。そのため、地元の農産物をメインにした品揃えではなかなかお客様を呼び込めず、「買いたいものがなく、人が来てくれない」毎日が続きました。
その頃は、地元の農産物を販売する直売所を貫き通すのか、直売所にこだわらずスーパーとして品揃えを充実させていくのか、どっちつかずの状態だった、と公司さんは言います。
「他の仕事をしようかとも思いました。この店自体がなくなるんじゃないかと思い、辞めたいと言ったこともありましたね。」
社長や公司さんをはじめ、みんなでこれからのあり方を模索する中、スーパーの経営ノウハウを持っている会社に協力を仰ぎました。商品の提供やアドバイスを受け、店内の模様替えを行い、自分たちで少しずつお店を変えていきました。
「やっていくうちに、あ、面白いなって。お客様の欲しいものが揃えられるようになり、仕事が楽しくなってきたんですよね。」
休みの日でもいろいろなところにでかけると、商品の鮮度や並べ方などについ目が行ってしまうという公司さん。社員が1人増えて時間に余裕ができたので、もっと手順や工程を工夫したい、新商品を作ってみたいなど、「やりたいことが積み上がっています」と言います。
そんな公司さんに、小国でスーパーを営むことへの思いをお聞きしました。
「お客様が喜んでくれる店であればいい。スーパーだけでなく、セレモニーホールの運営など、時代に合わせお客様のニーズに合わせ努力していけば、継続は不可能じゃない。」
「タイムスケジュールをうまく組み、コストを下げ、いかにお客様に安く提供できるか。田舎だからこれでいいだろうってしたくない。工夫していけば、小国だけじゃなく、近隣の町からも来てくれるんじゃないかなって思ってるんです。」
うちの会社はゼロからやるんで、と公司さんは言います。
「その道のプロがいないため、自分たちで工夫して行動していく過程で、その経験が身になっていく。自分が身に付けたことを他の人にも伝えていき、みんなでレベルアップしていけば、いろいろな可能性がある」と話してくれました。
「農産物の生産者さんの話を聞くと、農業にも可能性はあるなって思いますね。この肥料を使い、この面積でこの収量、という計算をしていけば、儲けも出てくる。農業が儲かるようになれば、若い人もここに残って農業をするかもしれないし、質のいい野菜をうちの店に出してもらえば、それでお客様も呼べるなぁ、なんて考えてます。」
『もったいない村』では、地元の若者がアルバイトをしています。
「ちゃんと目指すものがあって、頑張っている姿は立派だし、進路が決まったら報告しに来てくれるのも嬉しいですね。」
彼・彼女らに先輩として伝えたいことは何ですか?と聞いてみました。
「社会に出るって大事だと思いますよ。嫌だけど逃げられない、必要に迫られて自分で何とかしなくちゃいけない、っていう場面がでてくるじゃないですか。それは半強制ではあるけど、今までとは違う世界を味わうことができる。そして、同じ物事を経験するんなら、興味を持ってやった方がいいと思う。言われたことをやってるだけじゃ、1ミリも成長しないから。」
「興味を持って自分なりに考えながら仕事をすることが、次の可能性にも繋がるんじゃないかな」という公司さん。
『もったいない村』も、そして小国も、いろいろな可能性に満ちているのかもしれません。

佐々木知子 支援員