おぐにっ子からあなたに伝えたいこと~⑩
「キミ達の選んだ道を応援しています。そして、キミ達の先輩が、小国で選んだ道も知ってほしい。」
自分とは違う世代の彼・彼女が、こんな風に小国を考えているのだと知った時、新成人だけでなく、たくさんの人たちにこのメッセージを知ってもらいたいな、と思いました。「おぐにっ子からあなたへ」、お伝えします。
第10回は、山岸麻美(あさみ)さん(33歳)です。
「私、“山岸さん”って呼ばれたいから働くんです。○○ちゃんママ、じゃなくて、山岸さんって呼ばれたい!」
そうはじけるように笑う麻美さんは、4児のお母さん。長岡市の子育て支援施設『子育ての駅ぐんぐん』のスタッフであり、母子保健推進員さんでもあります。
高校を卒業後、医療事務の専門学校に進み、結婚や出産で職場を離れたり変わったりしながらも、医療事務の仕事を続けていました。
ところが、4人目の出産の時は保育園に空きがなく、久しぶりの専業主婦を楽しむことになりました。せっかくなので「あちこち行ってみたい!」と出かけた先で、『ぐんぐん』の施設長ババさんに出会います。もともと『ぐんぐん』が好きで、居心地がいいと感じていた麻美さん。こんな場所で働きたい、お母さんに寄り添う仕事がしたい、という思いを話したと言います。
その後、市の子育て支援員研修を受講。いろいろな縁がつながり、今『ぐんぐん』のスタッフとして働いています。
「ここで働いていると、ほんと楽しくって楽しくって!」
と、麻美さん。いやなこと、落ち込むこともあるけれど、それは起こるべくして起こることなのだと、前向きに考えられるようになったそうです。
お母さん達の悩みに寄り添いながら、考え込んでしまうこともありますが、ほかのスタッフといろいろ話をし、共有できる環境は恵まれている、と言います。
「小国にいれば、○○ちゃんのママ、山本商店の娘…とついて回るけれど、仕事に出ればただの山岸さんになれる。子どもを通しての私じゃなく、自分でいられる。そんな切り替えは大事ですね。」
そんな麻美さんに、「小国から出てみたいと思ったことはないですか?」と聞いてみました。
「あります、あります。何度も町場に住みたいと思ってました。でも小国の山の中で、雨の匂いや雪の匂いを感じると、生きてるって、人が土の上に立つってこういうことだよね、って思うんです。この感じがすごい好き。」
「子ども達には、将来好きな所に行けって言ってます。でも長女は、『どこにも行かない、山にいたい。山でなきゃ暮らせない、セメントの中じゃ暮らせない。土とか畑がないとやだ、空が広くないとやだ』って。」
まぁ、次女と三女は好きなこと言ってますけどね、と笑う麻美さん。
3人のお嬢さんは、麻美さんが卒業した小学校に通っています。
「長女が入学した時、すごい感慨深いものがありました。あ、同じ体操服!あ、同じ校歌!…って、なんなんでしょうね、不思議な感覚です。しみわたりしながら学校に行って怒られたりしたことを、『わかるよ~!』って娘と言えることが楽しい。
自分が子どもの頃を、もう1回やらしてもらってるみたいな感じです。今思い出すと、楽しいことばっかりだったなぁ。電車ないけど、最寄駅まで車で15分だけど、いいとこで暮らしてるよ~って思います。」
山や川、土や水、自然に囲まれのびのびと暮らすのはぜいたくなこと、と麻美さんは言います。
「子ども4人庭に転がしておいて、そこでたき火でもするって、考えてみればすごいぜいたくですよね。今アマゾンがあるから、買物とかも不便がない。『これアマゾンにある?』『ちっと待ってれ…明後日届くって!』イオンに行くより早いです(笑)。」
麻美さんは今、小国でも、子育て支援の活動を広げていこうと活躍中です。
子育て中のママさん達とのんびり茶話会を楽しむ“おぐにママさんの会”の運営に携わり、自分の集落で“寺子屋”も始めました。寺子屋は、子ども達の長期休みの数日間わいわいとみんなで集まり、子ども達が自分で立てた計画に従って、宿題をしたり本を読んだりする会。以前、学校の先生だった集落の方が、見守り役をしてくださっています。集落の老人会とコラボできたら楽しそう!と、夢も広がっています。
「寺子屋に関しては、ずっとやっていきたいですね。
あと、もう一つ思い入れがあるのは、こもち(小正月)の『鳥追い』の行事です。これは何とか続けたい、残したいと思ってます。大人が拍子木を叩き、子ども達が玄関先で歌を歌い…歌が終わると、お家の人からお菓子や金一封をいただき、みんなで山分けです。新町の“ハロウィン”って呼んでるんですけどね。
うちの末っ子の長男が、中学3年生になるまではやりたい!あと13年…きっとなんとかなる!」

佐々木知子 支援員