小国中学校地域貢献活動
長岡市小国地域の人口は約5,500人。日本の中山間地域のほとんどがそうであるように、ここ小国地域も過疎化、高齢化、少子化に悩まされています。そんな中、地域唯一の中学校である小国中学校の生徒さんは、「地域貢献活動」を通して地域の皆さんを元気にしてくれています。
小国中学校が10年以上にわたって続けている小国地域の元気の素、「地域貢献活動」を紹介します。
小国中学校の「地域貢献活動」は、毎年4月~11月の総合的な学習の時間に行われています。この活動は、中越大震災(平成16年10月23日)で大きな被害を受けた小国地域が復興に向けて動き出した平成17年に、「中学生の力で少しでも小国の役に立ちたい、小国を元気づけたい」との思いから始まりました。
中学生が行う地域の貢献活動と言うと、全校生徒一斉に道路のごみ拾い、公園や道路沿いの花壇の花植え、などを想像するかもしれませんが、小国中学校の「地域貢献活動」はちょっと違います。
“おぐにカンパニー”という仮想の会社を立ち上げ、その中には“運営本部”“企画部”“活動部”“技術部”があり、生徒が主体的に活動できるようになっています。もちろん、全校生徒が“おぐにカンパニー”の社員です。
○営業活動は全員で
ただ待っているだけでは、仕事は来ません。自分の住む集落の総代さん、今までに依頼をくれた事業所、総代さんに紹介していただいたお手伝いが必要そうな高齢者のお宅などを手分けして訪問し、「地域貢献活動」の説明、申込用紙の配布などを行います。
申し込みのあった仕事は、各部に割り振られ、依頼のあった日に作業に伺うのですが、その依頼内容は実に様々。もちろん、庭の草取りや石拾いといった単純作業の依頼もありますが、生徒たちの企画力や技術力が試されるものも多くあります。
○ダンスや演奏はおまかせ
高齢化が進んでいる小国地域では、ほとんどの集落で定期的に高齢者のサロン(お茶会)が行われています。このサロンでダンスや演奏を披露してくれるのが“おぐにカンパニー”。年に二回ある一日活動の日には、ダンスを披露し、中学生が昼食を作り、高齢者の皆さんとおしゃべりしながら一緒に食べるということもあります。小国地域には子どもがいない集落がいくつかあるので、中学生が来てくれるこの機会を楽しみにしているお年寄りも多いようです。
○プロも顔負けの技術力“窓ふき”
技術部には“窓ふき”を極めた生徒さんがいるようです。本格的な道具と技術、そしてやる気で、なかなか掃除が行き届かない外側の窓をきれいに磨き上げてくれます。
○地域行事への参加・協力
地域をあげて開催するトレイルランニングの国際大会“越後カントリートレイル”の時には応援用の横断幕を作成し、小国の夏を彩る“もちひとまつり”の時にはトラック山車を作り自らそれに乗り込みます。地域行事への積極的な参加は、周囲の大人たちを元気にしてくれます。
○中学生目線のまちづくり
技術部、活動部が依頼を受けての活動であるのに対し、企画部は一年間を通して一つの集落に入り、この集落がより暮らしやすくなるようなまちづくりの取り組みを考えます。
集落に住んでいる人たちの話を聞くと、たくさんの“いい所”と同時に「子どもがいない」、「活気がない」などの“困った所”もたくさん出てきます。この“困った”を解決するために自分たちは何ができるのか、毎年いろんなアイディアを出し実践します。
<猿橋集落のまちづくり(H27)>
○猿橋を元気にする“ODT(小国大好き隊)プロジェクト”
「集落に住む人たちにいつまでも元気に健康でいてもらいたい」という思いから、ウォーキングロードの設定、野菜が買えておしゃべりも楽しめる一日限りの直売所の設置、美味しい水で育ったお米で作ったおにぎりやパンフレットをイベント会場で配布しました。
○猿橋を盛り上げたい“Monkey Enjoy Project”
「昔の猿橋のように活気づけたい」という思いから、おすすめスポットを入れた集落看板を作り、イケメン神社(猿橋神社)に人が集まるよう“さる御籤”を作成しました。そして、新たな名所となるように、ホタルのいる沢を整備し、看板を設置しました。
どちらも、中学生ならではの発想と行動力で猿橋集落を応援しました。
<上岩田集落のまちづくり(H28)>
○上岩田を活気あふれる集落にする“トラGプロジェクト”
上岩田のキャラクター“トラG”と“かしわこちゃん”を考案し、オリジナルグッズやパンフレットを作成しました。パンフレットには上岩田の見どころとともに、集落内に同じ苗字が多いため小国地域では今でも愛用されている“屋号”も紹介されています。
○人をたくさん呼び上岩田を知ってもらう“神岩田プロジェクト”
上岩田神社には、いろんなお宝が眠っていました。その中で彼らが目を付けたのは、境内にある雷に打たれて中が焼け空洞になったにもかかわらず、20年たった今でも枯れずに葉を茂らせ続けている杉の大木。こんな上岩田神社をPRするために、“神秘の大木”のリーフレット、迷わずに神社に行けるよう看板を設置しました。そして、集落内の名所を巡るスタンプラリーを作成しました。
女子生徒が多かったこの年は、可愛らしさ満載のまちづくりになりました。
ありきたりでしょうか、そうかもしれません。ですが、まちづくりって大人が考えても難しいもの、そして考えているだけで何も進まないことも多々あります。その点、企画部の生徒たちは、全14回の活動の中で、集落の情報を集め、プランを考え、実行するのです。大したもんだ、と思わずにはおれません。
○自分たちを知る
この様に、実に様々な活動をしている“おぐにカンパニー”では、どの部でどんな活動が行われているのかをみんなに知らせることにも力を入れています。運営本部では、毎週各部の取材に回り、それを壁新聞の形でその日のうちに校内に貼りだします。そして毎年11月に行われる「地域貢献活動」学習発表会は、中学生はもとより、地域の小学校5、6年生、地域の人たちを招いて行われます。まさに地域に根付いた活動なのです。
このように順風満帆に見える「地域貢献活動」ですが、震災復興がひと段落したあたりから、次第に指示待ち、依頼待ちになり活動が停滞してしまった時期もありました。そんな時、小国中学校ではこの活動を1年間休止し、これからどうすればいいのかを教員と生徒でじっくりと検討したそうです。
この1年間の検討の末に生まれたのが“おぐにカンパニー”です。運営本部、営業部、企画部、活動部、技術部の5つの部署を設定し、今までの依頼を受けての活動だけではなく、地域に対して多様なかかわり方ができるよう工夫しました。
この活動を通して「自分は小国地域の役に立っている」「自分は小国地域の一員である」という気持ちを持つことができ、自分に自信を持てるようになったそうです。このような前向きな気持ちは、他の活動にも波及してきているようです。
平成27年10月に時事通信社主催の教育奨励賞の最高賞を受賞したこともあり、“おぐにカンパニー”への依頼件数は年々増加しています。しかしながら、小国中学校の生徒数は減少傾向にあり、発足当初は5つあった部も平成27年度からは営業部を廃止し4つの部に縮小せざるを得ない状況となっています。
「自分も地域の役に立てる」「子どもも立派な地域の一員」。こんな意識をあたりまえのように持っている小国中学校の生徒は、地域の宝。彼ら、彼女らが大人になってから、小国に住もうと思えるような地域でありたいと思います。

廣橋潤 支援員